私が伝えたいこと
My Story
2011年、仕事をやめて再びアメリカで学生生活を始めた私は、Biology of Cancer(がんの生物学)の講義で、加工肉や四つ足動物の肉に発がん性があることを知りました。
健康のためにハムやソーセージはできるだけ食べない、牛肉や豚肉よりも鶏肉を選ぶ、肉よりも魚を選ぶ…といった食事を心がけて数年たった頃、ある一つの動画に出会いました。
その動画では、生まれたばかりのひよこたちがベルトコンベアで運ばれ、次から次へと生きたままシュレッダーにかけられていたのです。
ピヨピヨ鳴いている赤ちゃんを、まるで紙のようにシュレッダーにかけている…?
私は目を疑いました。
メスと違って、オスのひよこは卵を産まず、肉も硬いので殺されているというのです。
売れなければ育てても仕方ない。だから生まれてすぐにシュレッダーにかけて殺す。
どうしてそんなことがまかり通っているのか分かりませんでしたが、こんな行為に加担したくないと思い、その日を境に卵を食べるのをやめました。
卵を食べるのをやめたものの、栄養の知識があると自負していた私は、動物性食品を摂らなければ必要な栄養を満たせるはずがないと思い込んでいました。
それ以前に、子どもの頃から“なんでもバランスよく食べるのがよい“と教わってきていましたし、それを特に疑問に思ったこともありませんでした。
このまま肉も卵も食べなかったら、私の栄養は偏って、きっと体を壊してしまう…。
そう思った私は、リサーチを始めました。
「動物性食品を摂取しなければ栄養を満たすことはできない」
検索すれば、そんな文言が出てくるだろうと思っていました。
でも、そんな情報は見つかりませんでした。
代わりにハッキリと分かったことは、
・世界には動物性食品を摂取せずに元気に生きている人たちがたくさんいること
・きちんと計画されたプラントベースの食事からは十分な栄養が摂れること
・健康的なプラントベースの食事は健康状態を改善させる可能性があること
USDA(米国農務省)、米国栄養士会、その他多くの医師やNPO団体などが、健康的にプラントベースの食事を実践するための方法を提示していたのです。
「栄養のために動物を食べる必要はない」
これは衝撃でした。
それまでの私の人生で誰も教えてくれなかったことです。
ひよこの動画をきっかけに、他の動物性食品の生産過程についても調べ始め、動物の搾取や環境破壊にできる限り加担したくないと思うようになっていた私は栄養に気を配りながら、段階的に、肉、乳製品、そして最後に魚もやめて完全菜食へと移行しました。
プラントベースの栄養についてもっと知りたいと思い、関連する本や論文を読みあさり、いくつものドキュメンタリー映画を見て、プラントベース栄養学のオンラインコースやその他のウェビナーなどで得た知識を実践に落としていきました。
もちろん、この過程で不安がなかったと言ったら嘘になります。
この情報は私には当てはまらないかもしれない
魚も食べなくなったら力が出なくなるのでは?
頭も回らなくなるかもしれない
生理が止まるかも
髪の毛が抜けていくかも
貧血で倒れるのでは?
いろんな心配をしましたが、それはすべて杞憂でした。
それどころか、あることが普通だと思っていた体のちょっとした不調が、健康的なプラントベースの食事を始めたことでなくなっていったのです。
胃もたれするのは30歳を過ぎたから
生理のときに貧血気味になるのは仕方のないこと
食後に眠くなるのは当たり前
年齢のせい、遺伝のせい、私の意思が弱いせい…
そう思っていたのは全て間違いだったと気付きました。
「それまでが不健康だっただけでしょう?」と思われるかもしれませんが、トレーナーになろうと思うくらいですから、それまでの私も健康には自信があったんです。
なので、よい変化を体験したことはとても驚きでした。それまで健康だと思っていたものは一体何だったのか…。
こんな素晴らしい食事があることを誰かに伝えなければ!という思いに駆られ、得た知識と体験をSNSで発信し始めました。
動物性食品を避けさえすれば食事が健康的になるというわけではない。
動物性食品を避けることのメリットは多々ありますが、プラントベースの食事を実践する上で気を付けたほうがいいことがあるのは事実です。
でも、このことはまだまだ一般にはよく知られていません。
栄養や健康についてだけ考えるなら完全菜食をする必要はないかもしれませんが、動物を食べるにしても、健康に気を配るなら気を付けたいことがたくさんあるのも事実です。
プラントベースの食事をしていることを伝えると、「食の楽しみを犠牲にして我慢を続けている」と思われることが少なくありませんが、野菜しか食べないわけでも、我慢をしているわけでもありません。
私にとってプラントベースの食事は、とても楽しくワクワクするものです。
それまで馴染みのなかった食材に出会ったり、レシピを開拓したり、新しい商品を試したり、プラントベースのレストランでユニークなメニューを楽しんだり、同じ価値観を持つ人に出会ったり。
選択肢が狭まってもおかしくないように思いますが、私の食事は多様化しました。
買い物や料理は楽しくなり、家事の手間は減り、体調が安定し、毎日エネルギーに満ち溢れるようになりました。
プラントベースのライフスタイルは、私たちが本来持っている力を最大限に引き出してくれると確信した私は、パーソナルトレーニングを受けてくださる方にも是非体験してほしいと思い、希望する方のプログラムにプラントベースの食事を組み込んできました。
その結果、
余分な体重を一年で40lbs(約18Kg)も減らして長期間維持できている
疲れにくくなった
関節痛が治った
便秘が治った
効率よく筋肉を付けることができた
味覚が変わって健康的な食事を好むようになった
このような嬉しいフィードバックをいただくようになりました。
ダイエットするなら食事の量を制限しなければならないと思っている人は多いですが、そんなことはありません。ホールフードを中心とした健康的なプラントベースの食事では、たくさん食べることがむしろ大切なこと。たくさん食べても後悔することも自分を責めることもありません。
適切な食事と、目的やレベルに合ったトレーニングを組み合わせてしっかりと実践すれば、さらによい変化を体験することができます。糖質を制限するダイエットで代謝が悪くなってしまった方、糖尿病(予備軍)、高血圧、肥満を初めとした様々な不調に悩む方も、健康的なプラントベースの食事で健康を取り戻すことができます。
ダイエット業界・フィットネス業界では、長期的な健康を度外視して短期間で見た目を変える食事法が、まるでよいものであるかのように見せかけられていることが少なくありません。無理なダイエットで精神的に追い詰められる人も珍しくありません。そのような食事法の多くは、動物性タンパク質や加工食品を多く取り入れたものです。
私は、動物を人工的に繁殖させて殺し、環境を破壊して、健康を害してまで見た目に強くこだわる意味はなんだろう?と考えるようになりました。SNSに溢れる現実離れしたボディイメージを目指して、精神を病みながら、動物を犠牲にし、地球を破壊していく…いったい何のために?
年齢とともに誰でも見た目は変わります。私たちの体は、いつかは灰になります。見た目よりも、世の中にはもっと大切なことがたくさんあるのではないか?動物をたくさん犠牲にして変えた強そうな見た目を誇る人もいるけれど、本当に強い者は弱い者を救うのではないか?そんなことを考えるようになりました。
英語圏には健康的なプラントベースの食事で摂食障害を克服する人も少なくありません。私は10代の頃に過食嘔吐を経験しているので、このことをもっと早く知りたかったです。
太りたくなくて食べ物を制限しようとするけれど上手くいかずに自暴自棄になってしまう人の中には、「私の努力が足りないから」「意思が弱い自分はダメだ」「我慢できないのはだらしないから」などと思ってしまう人が多いですが、それは違います。
世の中に出回る加工食品の多くは、何度も買ってもらえるように作られています。そういった食品に食欲を乱されるのは当たり前のこと。
動物性食品は量(かさ)に対してカロリーが高いので、胃が満たされて脳が満腹だと認識したときにはすでにカロリーオーバーですが、必要なビタミン・ミネラルを十分に摂取できないので、体は栄養を求め続けます。
失敗するのは努力が足りないからでも、意思が弱いからでも、だらしないからでもありません。体に適切な食事を選んでいないからなのです。加工食品や動物性食品を多く摂取しながら意思の力で食事をコントロールしようとすれば、精神を削られても全く不思議ではありません。
食事の選択には心も大きく関連しています。食事でも仕事でも人間関係でも、人に言われるがまま自分にとってマイナスにしかならないものを受け入れてしまったり、よかれと思って自己犠牲的な選択をしてしまう人がいますが、健康的なプラントベースの食事では、動物や地球環境などにとってよい選択をすることで、結果的に自分にとってもよい選択になります。自分を大切にすることが難しい人でも、周りを大切にすることで自分を大切にできるのです。
動物を大量に繁殖させて環境を破壊すればするほど、その環境で作られる私たちの食べ物は健康的ではなくなっていきます。私たちの行動はすべて私たち自身に返ってくるのです。自分にとってよいものを選ぶのはワガママなどではありません。より多くの人がよいものを選び取って自分のエネルギーを満たし、余ったエネルギーを循環させてこそ、よりよい世界が作られるのだと私は思います。
トレーナーとして学び働く中で、動物性食品や加工食品を多く含む食事以外にも、心身を痛めつける要素が他にもあることに気付きました。現代に暮らす私たちの多くは、パソコンの前に毎日長時間座ったり、機能性よりも見た目を重視した幅の狭い硬い靴を履いて歩いています。このような行為はあまりにも普通になってしまっていますが、私たちが本来兼ね備えている身体機能をゆっくりと壊していくのです。自虐的行為をできる限り避けて、失われていく身体機能を取り戻すことで、私たちは毎日をより快適に過ごすことができるようになります。この情報社会で今必要とされているのは、何かを足すことではなく、まずは引くこと。マーケティングで不安を煽られるままに何かを足すのではなく、本来の自分が機能するように不要なものを取り払ってあげればいいのです。私たちは皆そのままで十分素晴らしいはずなのに、そうではないと思わされているのです。
周りを大切にすることで自分を大切にする
自分を大切にすることで周りを大切にする
そんなライフスタイルを、もっと多くの人に知ってほしいと願っています。
私はプラントベースの食事を通して、食事以外の生活のあらゆる面でも、自分の行動の裏にどのような犠牲があるのか考えるようになり、法や政策が必ずしも倫理的・道徳的ではないことを強く認識するようになりました。
動物を犠牲にしない選択は、環境問題や健康問題の改善だけでなく、差別問題や貧困問題の解決にもつながっていると知りました。アメリカでアジア人女性として生きている私にとって、人種差別や性差別は他人事ではありません。プラントベースをブルジョワの趣味であると思っている人は少なくありませんが、低所得母子家庭で育った私にとって貧困問題も他人事ではありません。子を持つ身としても、少しでもよい未来につながる選択をしたいと思います。
このような理由で、3年かけて電子書籍「PLANT POWER」を書き上げました。2022年の発売以降、多くの方に読んでいただき、うれしい感想をたくさんいただいています。
この電子書籍では、私がプラントベースの食事を実践する前に知りたかったこと、実践するにあたって知りたかったこと・知っておきたいことを、171ページ、約13万文字にまとめています。管理栄養士監修なので栄養情報も安心です。
また、簡単なプラントベースのレシピを集めた「プラントベースダイエット2週間チャレンジ」を、誰にでも参考にしていただけるよう無料で配布しています。
すべのことはつながっている、と私は思います。
一人ひとりの力は小さくても、一人ひとりが自分に、そして周りによい選択をすることで、同じ地球をシェアする私たち皆が毎日ハッピーに生きられるのではないか、そんな風に思います。

PLANT POWER CLUBにご登録いただくと特典があります。どなたでもお気軽にご参加ください。