「ヴィーガンやめました」「ヴィーガンは不健康」をアメリカの医師がぶった斬る!

 

プラントベースの食事法(菜食)は、心臓病、高血圧、糖尿病、肥満など、いわゆる生活習慣病を改善する効果が高いことで知られています。疲労回復の早さや栄養バランスのよさを理由に菜食に移行する一流アスリートも多数。

近年、アメリカと同じく日本でも、病気を治療する目的だけでなく、環境保護やヴィーガン(脱動物搾取)思想をきっかけに菜食に移行する人が増加していて、コンビニや大手チェーンレストランなどの身近なお店でも、手軽に菜食を楽しめる環境が徐々に整いつつありますよね。

しかしながら、食材が完全に植物性100%なら何でも体によいのかというと、そうであると言い切ることはできません。

外食産業や食品企業は、消費者に気に入ってもらうことを前提に利益を最優先して商品を開発しますから、安価な原材料を使い、刺激の強い味付けをします。農薬や遺伝子組み換えや食品添加物などリスク要因はたくさんあり、植物性100%の食事だからといって何から何まで健康的とは限らないのです。

動物性食品を食べるにしても、食材、調味料、調理方法でリスクが異なります。魚介類は天然と養殖それぞれに異なるリスクがありますし、オーガニック飼料で生産された肉と、肉骨粉や遺伝子組み換えの穀物などを与えて生産した肉とでは健康リスクが異なるでしょう。それと同じく菜食も、食材、調味料、調理方法次第で体に与える影響が異なります。

痩せることを目的に菜食を実践する人も少なくないですが、菜食を徹底していれば痩せることができるかというと、それもまた違います。

「私の食事はヴィーガンだからヘルシー」と思い込んでいても、食事がジャンクフードと呼べる内容ですと、当然ながら大きな病気の予防や改善には貢献しません。減量効果も小さいでしょう。ジャンクフード同然のヴィーガン食品やヴィーガンメニューが人々を誤った方向へ導いてしまい、このままでは数年後には「やっぱりヴィーガンは不健康だよね」という意見が大勢を占めるのではないかと私は懸念しています。

現にアメリカでは、ヴィーガンの食事を何年間も続けた結果、体調を崩してしまい動物性食品を再び食べ始める人が少なからず存在します。いずれは日本でも、菜食人口が増えれば増えるほど、同じように体調を崩して動物性食品の消費を再開する人が出てくるでしょう。妊娠をきっかけに動物性食品の消費を再開する人もいますが、菜食を適切に実践できていれば妊娠しても動物性食品に頼る必要はないというのが専門家の見解です(詳しくはeBook「PLANT POWER」をご参照ください)。動物性食品は数字の上では特定の栄養素が豊富ですが、動物性食品の消費に伴う生体濃縮リスクについても知っておくべきでしょう。

好ましくない方法で菜食を続けた結果、体調を崩す程度ならまだしも、致命的な病気や怪我をしてしまったら手遅れです。病気や怪我を防ぐためには、避けるべき食材・調味料・調理方法を知っておくことが重要。食事に意識的になり、能動的に選択することは、健康に生きていく上で欠かせません。

注目を集めることを目的に、マーケティングとしてヴィーガンについて発信している人は少なくなく、そういう人はヴィーガンを流行りとしてとらえているので発信している情報が正しくないことが多々あります。

また、段階を経ることなく、いきなりローヴィーガン(生菜食)、フルータリアン(果実食)、ジュース断食などをしてしまい、体調を崩してしまう人も珍しくありません。

「なぜ体調を崩してしまうヴィーガンがいるのか?なにが悪いのか?どのような食事をすれば安全安心で健康的なのか?」

ガース・デイビス医師(体重管理を専門とする肥満医学分野のリーダーであり、「PROTEINAHOLIC(プロテイナホリック)」の著者)が、ヴィーガンのリスクや問題点だけでなく、理想的なヴィーガンの食事はどうあるべきなのかを的確に説明している動画があり、ぜひ日本のみなさんにご紹介したい素晴らしい内容ですので、日本語に訳してみました。

 

 

動画タイトル「'Why I'm no longer vegan' Insanity(あなたがヴィーガンをやめた理由、ありえませんねぇ)」

(以下、デイビス医師) 

私はすでに文章でも発表していますし、この動画の撮影後は再びこの話題に触れるつもりはありませんが、本当にバカげたことが起きています。

私以外の医師や科学者がこの話題に触れることはありませんが、ミレニアル世代のYouTuberが発信している「ヴィーガンやめました」「私がヴィーガンをやめた理由」といった動画を観て不安になった人たちから、「彼らの主張と行動は正しいの?」「ヴィーガンはやめておいた方がいいの?」「やっぱりヴィーガンだと体を壊すことになる?」といったメッセージがたくさん届くので、お話しします。

私に言わせると、「ヴィーガンやめました」という発信はクレイジーです。彼らはみな年齢的に若く、摂食障害を患っている人も多い。

私がヴィーガンになったのは、ヴィーガンになることを勧める内容の動画をYouTubeで観たからではありません。「あの人がヴィーガンだから私もヴィーガンになろう」と決意したわけではないのです。

私は科学的な理由でヴィーガンになりました。自分でリサーチをした結果、私はヴィーガンになったのです。ホールフードプラントベースの食事が効果を示すことを知ったからであり、動物性食品や畜産業が環境に与える悪影響を知ったからです。そして、動物が受けているとてつもない拷問について知ったからであり、このことがまさに「ヴィーガニズムは倫理である」という重要な点につながります。

ヴィーガニズムは倫理なので、「ヴィーガンをやめる、ヴィーガニズムを離れる」という彼らの言い分がよく分かりませんし、「私は自分の倫理観を変えました」ということを意味する発言なのではないかと想像します。

私は真のヴィーガンを知っています。真のヴィーガンは、動物のためのヴィーガンです。彼らは皮製品や羊毛さえ身に着けません。動物の保護に専念しているので、「ニキビができたから」「ガスが溜まるから」などという理由でヴィーガンをやめることは決してありません。動物に対する強い思いがあるので、ヴィーガンをやめようという考えすら浮かばないはずなのです。

このこと(訳者注:自分の健康を度外視して菜食を実践していること)は、考えようによってはヴィーガンムーブメントをある意味傷つけるものになっています。

ヴィーガンの被験者で行われてきた研究の多くは、エシカルヴィーガン(訳者注:健康目的ではなく、倫理的な理由で菜食を実行している人たち)を対象としています。例えばオックスフォードで行われたEPIC研究(訳者注:がんと栄養に関する欧州前向き研究)には、エシカルヴィーガンが多く含まれていました。

彼らの食事をみてみると、食物繊維が非常に少なく、カルシウムレベルも非常に低い(500㎎すら摂取できていない)人がいましたが、このような結果に基づいてヴィーガンとヴィーガンの健康状態について一般的な声明が出されてしまうわけです。

ちなみに、彼らはそれでも非常に健康的でしたが、よりバランスの取れた食事をしていれば、さらに健康的だったことでしょう。でも彼らは自分の健康のために菜食の食事を実践しているわけではなく、動物のために実践しているのです。

ですから、「ヴィーガンやめました」と発信しているYouTuberたちはヴィーガンではなく、それまでの(訳者注:一定期間続けていた)食事をやめているだけなのです。

そして、彼らがしているヴィーガンの食事は、オーニッシュ博士やエッセルスティン博士、特にファーマン博士や私が患者に勧めているような食事ではなく、同じ分野ですらありません。

私も二十歳の頃は彼らのように生きていましたが、若者は興味が次々に移り変わります。そして、ジュースしか飲まないというような信じられない極端なことをするのです。

ジュースダイエットは糖質を摂取しているだけであり、食物繊維はほとんど摂取できず、一部の大切な栄養素も摂取できません。

それから、食材を加熱すべきではないと考える人もなぜか多くいて、私には信じられませんが彼らは色々な食べ物を避けているのです。どういうわけか「大豆は悪い」と信じて食べない人もいますが、科学的には大豆はアミノ酸(タンパク質)の素晴らしい供給源であり、今では豆乳の多くはカルシウムが強化されています。豆腐もカルシウムが強化されているので、豆乳や豆腐を避けるとカルシウムを十分には得られません。

彼らは豆類を食べたとしてもほとんど食べていないようなものですし、加熱しないと食べられないことを理由に、豆類だけでなく穀物もほとんど避けているのです。

ビタミンBや亜鉛が欠乏しても、「サプリメントを摂取する行為は自然ではないから」と主張してサプリメントを摂取しないせいで、ビタミンB欠乏症になって気分が悪くなる人もいます。

食事が悪いと病気になります。肉を食べていないからといって、健康的な食事をしているということにはならないのです。

そして、不健康な方法で菜食を続けていた彼らは、カロリーや脂質が多い食材である肉を久々に食べた結果、脂質を得たことで調子が良くなったと感じて、「私はヴィーガニズムに殺されかけた」と言うのです。彼らはヴィーガニズムに殺されかけたわけではなく、単に彼らが選択していた悪い食事に殺されかけたのです。これは明白です。

科学的に最も健康的とされるプラントベースの食事によって「殺される」などという主張はバカげています。

プラントベースの食事を実践するのは難しくないのです。朝起きて、「これが食べたいけれど食べられない…」などということはありません。

私は、朝はオートミールやベリーなどを食べていて美味しいですし、たまに豆腐スクランブルやブリトーを食べることもあります。ランチはスープやサラダやポテトです。穀物をたくさん食べますし、濃い緑色の野菜もたくさん食べます。豆類もたくさん食べますし、果物もたくさん食べます。色々食べているし、空腹でいることもありません。

私が本当に驚いたのは、ヴィーガンの食事をしていながら食事量をコントロールしている人がいること。小食でほとんどカロリーをとらずにいて、調子が悪いと感じて、でもなぜ不調なのか原因が分からない。私からすれば原因は明らかであり、カロリーを十分に摂取できていないからです。私がしている食事では、そのようなことは起こりません。

ヴィーガンのボディビルダーに会ってみたり、テキサス州マーシャルで行われたベジフェストに行きましたが、そこにいた人たちは、まさに健康そのものですよ。信じられないほど健康的で走ったりしています。一日中美味しいものを食べていてハッピーで元気ですから、食事を変えようなんて思いもしません。

というわけで、私のアドバイスとしては、YouTube動画は徹底して完全に無視すること!まぁ皮肉なことに、ここで私がしている発信もYouTube動画ですけどね。

良くない食事をとっかえひっかえするミレニアルのYouTube動画(訳者注:「ヴィーガンやめました」「私がヴィーガンをやめた理由」などの発信)は無視することです。新しいものや動画で人気になるものに流されて、ほんの数か月の間にヴィーガンからボーンブロスの販売までする彼らの行為は実にバカげています。

健康とはどういうものかを示してくれる科学者が言っていることを聞いてください。USワールドニュースレポートの専門家が示す健康的な食事ランキングの上位にはオーニッシュダイエットがあります。ベジタリアンベースで、多くの人ができるように動物性食品も含んでいるDASHダイエットもあります。基本的にプラントベースの食事であるフレキシタリアンダイエット、そしてプラントベースが基本である伝統的な地中海式ダイエットもあります。これらのダイエットには非常に多くのエビデンスがあります。

ヴィーガンになりたければ、簡単にヴィーガンになることができますよ。どんな栄養素が欠乏するかについては断言できませんが、唯一摂取する必要のある大事なサプリメントはビタミンB12。これ(ビタミンB12)は摂取しないとダメ。豆類と穀物をたくさん食べていれば、亜鉛のレベルを心配する必要はありません。亜鉛は十分に摂取できます。

女性は鉄分が不足することもありますが、私がおかしいと思うのは、先ほどのYouTuberたちが、自分がヴィーガンであることを栄養のトレーニングを受けていない医師に告げると非難されてしまうという問題です。鉄分の不足をヴィーガニズムのせいにされますが、これはバカげている。

甲状腺機能低下症の患者が肉を食べていても食事のせいにしないのに、甲状腺機能低下症の患者がヴィーガンの場合は食事のせいにされてしまう。これはバカげたことです。データはヴィーガンの甲状腺機能低下症のリスクが高いことを示していないのです!

とにかく、鉄欠乏は肉を食べる人にもヴィーガンにもみられることです。でも、鉄欠乏の解決策は、肉を食べないことです。(訳者注:肉に多く含まれている)ヘム鉄は毒性が強くて悪いものですから、鉄分の補給には濃い緑色の野菜をたくさん食べたり、サプリメントを使えばよいでしょう。

オメガ3の欠乏も気付きにくいだけで一般的な問題かもしれませんが、現在も研究されています。私はオメガ3のサプリメント(藻類)を使っています。

毒素やダイオキシンやPVCが多いので、私は魚を食べたくありません。漁業によって環境が破壊されているので魚には以前ほどはオメガ3が含まれていないですし、私は藻類のサプリメントでオメガ3を摂取していますがとても簡単です。

タウリンのような特定のアミノ酸に関しては議論があります。体が作ることができるものは必須アミノ酸ではないので、タウリンに関してはあまり心配する必要はないと思います。クレアチンは、ボディビルダーはみんな摂取していますし、アスリートも摂取していることが多いです。クレアチンがベジタリアンの運動パフォーマンスを助けることを示した研究がいくつかあり、認知機能を助ける働きもあるかもしれません。私はクレアチンを試したことがあり時々使用します。違いはあまり分かりませんが、(訳者注:摂取すべき)サプリメントに加えてもよいでしょう。ビタミンDが不足している場合はサプリメントを摂取すればよいですが、不足していなければ要りません。ビタミンDを得る最良の方法は日光を浴びることです。

結論としては、健康的なプラントベースの食事は信じられないほど簡単にできて、素晴らしい気分になれるし、長生きさせてくれるということです。また、菜食でジャンクフードなど不健康な食事をすることも可能です。適切に選択する必要がありますが、ジュース断食でニキビができた若者(訳者注:主にYouTuber)の発信を基準にするのではなく、科学に基づいて選択するようにしましょう。

 

訳者あとがき

YouTubeなどで発信している人たちは、注目を集めるためのマーケティングだったり、お金儲けのためにヴィーガンという単語を使うことがありますし、発信している内容が事実や実体験に基づいているという保証もありません。彼らが実際に菜食を実践していたとしても、無駄なことや極端なことをしているケースが珍しくないのです。

マクロビもローヴィーガンもジュース断食もジャンクヴィーガンも全て菜食ですし、菜食という単語の意味はとても幅広いのです。それら全てをヴィーガンの一言で表して、「ヴィーガンの食事は不健康」「ヴィーガンを続けた結果、体調不良に陥りました」「ヴィーガンは私には合わないし、体質的に肉を食べたほうが良さそう」などと結論付けるのは、本当にバカげていますよね。他にも、菜食で不調に陥る原因として思い当たることといえば、以下のような例があります。

  • 糖質制限をしている、MCTオイルなどを使う
  • グルテン不耐性ではないのにグルテンフリーにこだわっている
  • 一日一食などを実践していて食べる量が少ない
  • 不必要なカロリー制限をしている
  • 知識と実践が伴っていないまま生菜食(ローヴィーガン)をしている
  • ヴィーガンではなくベジタリアンや肉食でも不足する可能性のある栄養素(主にビタミンB12)を補給していない
  • 西洋医学を極端に嫌っていて、受けるべき検査や診療を受けない。明確に異変を感じてから病院に行くようでは手遅れになるケースもあることを理解していない。

 

デイビス博士がお話されているように、西洋医学の医師にプラントベースの知識があるとは限りません。医師は栄養の専門家ではないからです。だからといって、ヴィーガン歴が長いだけであり専門的な知識を持っていない人のアドバイスに従うことが安全であると断言できるはずもないでしょう。ヴィーガン歴が長いことは、栄養や生理学に関する知識が豊富である証拠にはならないのです。また、ヴィーガンに関連した商品の販売や宣伝目的で情報が発信されていることも少なくありません。

「これさえ飲んでいれば〇と△が簡単に摂取できる!」「これを飲めば〇が不足することはない!」などと謳って健康食品やサプリメントを宣伝・推奨しておきながら、後々まさにそれらの栄養素が不足したことを公表し、「✕✕(病気や症状)になったので、やっぱり動物性食品を食べることにしました!おかげで体調が良いです」などと言うインフルエンサーも存在します。

やはり、知識と経験のある専門家のアドバイスを聞くことが最も安全でしょう。現にアメリカではプラントベースの食事に理解があるだけでなく、自身もプラントベースを実践している医師や栄養士が増えています。

誤解のないように書いておきますが、私は、食事が原因で体調を崩してしまう人を責めるつもりはありません。ただ、栄養や生理学を専門的に学んできたわけでもなく、いい加減なことを商売のために安易に発信する人がいることを非常に残念に思いますし、そのような発信を信じてしまう人が少しでも減ることを願っています。

医師だけでなくトレーナーも栄養学に精通しているとは限りません。私はコーネル大学のプラントベース栄養学のコースを履修していますが、これは栄養指導をすることができる資格ではないので、クライアントさんの食生活に関する助言にはとても慎重な姿勢をとっています。

必要に応じて専門家に適切な助言を仰ぐことは、健康に携わる人間として非常に重要なこと。例えば、骨折した人の治療を歯医者がするべきではありません。これが当たり前であることは誰にでも分かるでしょう。しかし、自分の専門外の話であるにもかかわらず、気安く栄養面のアドバイスをしているトレーナーや一般人が多すぎるように見受けられます。

このことも踏まえて、私のeBook「PLANT POWER」は管理栄養士さんに監修をしていただきました。安全な方法で続ける菜食は危険でないどころか、健康面で大きなメリットをもたらします。

一流のアスリートは、パフォーマンスの向上を求めて菜食を試した結果、不調を感じて動物性食品の消費を再開するというケースが極端に少ないのです。彼らは長年問題なく完全菜食を継続できていますが、「専門家にアドバイスを求める」「極端な食事制限をしない」「食材、調味料、お店選びに意識的になる」「適切にサプリメントを摂取する」といった姿勢が影響しているのではないでしょうか。

健康的な食事であることが科学的に証明されているホールフードプラントベースについては、ぜひ好評発売中のeBook「PLANT POWER」をご参照ください!