プラントベースを実践する海外の超一流アスリート
ドキュメンタリー映画「The Game Changers(ゲームチェンジャー)」が2019年に公開され、海外には菜食のトップアスリートがたくさんいることが日本でも知られるようになりました。タンパク質やカルシウムなどの栄養素を”無駄なく合理的に”摂取するために、肉だけでなく魚介類、卵、牛乳・乳製品を消費しないアスリートが増え続けています。
アスリートが菜食を選ぶ主な理由
- 疲労、炎症の軽減
- 回復の早さ
- 慢性的な痛みの改善、完治
- 持久力、集中力、柔軟性の向上
- 怪我の予防
- 筋力増強
- 無理することなく理想的な体を作れる
- 減量が楽
- 減量だけでなく増量も安全
- 体重、体型の維持が容易
- 栄養豊富
- 消化、吸収によい
トレーニングの後はお腹が空くし、ご飯がすごく美味しいですよね。菜食は栄養が豊富なだけでなく消化によいので、胃もたれの心配がありません。ボリュームのある食事で満腹になっても、眠気をごまかすためにコーヒーに頼ったり、横になりたくなるほどお腹が苦しくなることがなく、常に活動的。突然の腹痛や下痢などの心配もとても少なくなります。
肉食動物は睡眠時間がとても長いですよね。身近な例は猫ですが、肉や魚などの消化作業は重労働なので寝てばかり。ライオンは一日に20時間も寝るそうです。肉食動物ですら肉を食べた後はゴロゴロ寝てばかりいるのですから、体の構造が明らかに菜食に適している人間が肉を食べたら疲れて眠くなるのは当然。つまり、アスリートの疲労はトレーニングによるものだけではなく、消化に悪い食事も大きな原因になっているのです。
たくさん食べて活動的なのは草食動物。馬は草を一日中食べているし、ゴリラや象は大きくて強いですよね。ゴリラ、象、そして人間と遺伝子が99%同じであり消化管の構造もよく似ているチンパンジーなどが肉を常食することによって、強く、速く、健康になれるとは考えにくいです。
引退後に体重が大きく増加してしまうアスリートがたくさんいますが、競走馬はレースを引退しても肥満体になることはありません。つまり、自分の体に適していない食材が問題を引き起こすのです。
動物性の食材を食べていても、とことんトレーニングすることはできますが、長引く疲労により翌日以降のトレーニングに影響してしまうことがありませんか?菜食だと質の良いトレーニングを毎日安定して長時間できるようになります。
試しに、とことんトレーニングした日の食事を菜食にしてみてください。睡眠の質、翌朝の目覚めの良さ、体の軽さ、心身の爽快さなど、肉食との違いをお分かりいただけるでしょう。
なぜ一流アスリートほど菜食を取り入れているのかというと、激しいトレーニングをする人ほど菜食の良さを実感できるからです。スポーツに限らずあらゆる労働に菜食は力を発揮します。
<植物性の食材は人体に理想的>
肉や魚など動物性の食材の消化吸収は人体には重労働ですが、人体は植物性の食材を楽に消化、吸収、排泄できるので、菜食で生活していると体力に余裕が生まれて炎症や疲労の回復が進みます。その結果、集中力、持続力、回復力、気力が向上するので怪我の予防につながります。日々の食事内容を菜食にするだけでパフォーマンスが向上して、高いレベルで安定するのです。
<アスリートは激しい運動後のリカバリーがとても大事>
トレーニングの内容が同じでもリカバリーのスピードがパフォーマンスに差をもたらします。「トレーニング→疲労、炎症、怪我→回復」これの繰り返しですから、回復力は最も重要な要素。
機械や自動車などに質の悪い燃料を使い続けていたら、錆びついたり故障したりして寿命が短くなってしまいますよね。人体に適切な燃料は、植物性の食材なのです。
開始してすぐに菜食の効果を実感できます。やる気が増し、疲れ知らずになり、トレーニング仲間をうんざりさせるぐらい元気になります。まるで若返ったかのようにパフォーマンスが向上し、血圧やコレステロール値など様々な数値が改善するでしょう。
<驚異の菜食効果>
「回復が早い」
「激しいトレーニングを一日中するし、トレーニングは一日に二度も三度もあるから毎朝まるで二日酔いのように目覚めが悪かった。でも菜食にしたら素晴らしい目覚めに変わった」
「体がスッキリ軽くなる」
「強く、速く、パフォーマンスが向上する」
「エナジーレベルが上がった」
「同じコーチと同じトレーニング内容でも菜食にするだけで成果が上がる」
「質の高い練習やトレーニングを、集中力を保ったまま長時間できる」
「体重を楽に管理できる」
「関節が楽」「慢性的な肘や膝の不調が完治」
「ずっと麻痺していた腕の感覚が戻った」
「よく眠れる、目覚めが良い」
「体調が良くなり安定している」
「いつも休日はクタクタなので寝て食べてストレッチするだけだったが、菜食にしてからはトレーニングを週に7日できるようになった」
「練習後にしばらく息が上がりっぱなしになってしまうほどの激しい練習を毎日できる」
「痛みが治まりやすい」
「浮腫みが減り、体重の管理が楽」
格闘技、ラグビー、アメリカンフットボールなどの競技は、体が打撃や衝撃を直接受けることによる怪我や疲労も大きいですよね。だからこそ菜食の回復の早さを実感しやすいのでしょう。
食べたものは血液に影響しますから、食事は肉体だけでなく、思考や精神面にも影響します。
「気分にムラがなくなった」
「ストレスに強くなった、内面的にも強くなった」
「怒り、恐れ、不安、不満などマイナスの感情を抱くことが少なくなり、冷静でいられるようになった」
動物性の食材をやめるだけで、心身ともに大きく向上します。菜食の効果を何も知らないならまだしも、知ってしまったからには菜食を試してみませんか?向上心があるアスリートは実践していますし、完全菜食にならないにしてもフレキシタリアンやベジタリアンなどの形で菜食を取り入れるようになる人がとても多いのです。
<健康第一>
菜食は、がんや心血管疾患のリスクを低くすることで知られています。風邪をひくことも極端に少なくなり、体調が安定します。肉食だった頃は一年のうち20日間ぐらいを風邪や生理痛などの体調不良で過ごしていたとして、菜食になると年にほんの数日しか不調の日がなくなるものです。体調はトレーニングの質に大きく影響しますし、健康でないと最高のパフォーマンスを期待できません。寮や合宿生活などでは風邪などの感染が一気に広がってしまうことがありますが、菜食は体調管理の面でも優れています。
<ホールフードプラントベース>
普通の菜食ではなく、ホールフードプラントベースを実践しているアスリートも少なくありません。彼らは大豆ミートなどの代替肉や、ヴィーガンのピザ・ドーナツ・ヨーグルト・アイスクリームなどの加工食品を消費しません。それどころかプロテインパウダーなどのサプリメントも摂取せずに植物性の生鮮食品しか食べなくてもアメリカンフットボールのような過酷な競技ができるのです。おかずに肉や魚があれば栄養面で安心してしまいがちですが、菜食の食事こそ栄養豊富なのでサプリメントなどに頼る必要が大きく減ります。
練習内容に差がなければ、日々の食生活で差がつきます。アスリートにとって食の管理はとても重要な関心事ですから、動物性の食材だけでなく食品添加物や遺伝子組み換えをできるだけ避け、オーガニックを優先するなど質にもこだわるようにしましょう。高価なものにも安価なものにも、必ず理由があります。
<菜食はストイック?>
スポーツの世界はストイックな印象を持たれがちですよね。同じく菜食も、ストイックな印象を持たれてしまいがち。「自分を厳しく律し、禁欲的に行動すること」を意味するのがストイック。食事の回数、量、カロリーなどを制限するならストイックですが、菜食(特にホールフードプラントベース)は食事の量も回数も無制限であり、カロリーは制限するどころかむしろ意識して食べることを推奨されます。つまり菜食はストイックの対極に位置するのです。
菜食主義の金メダリストなどの話題になると「隠れて肉とか絶対食べてるよ!」と言う人がいますが、実際に菜食で激しいトレーニングを続けていると、わざわざ隠れて肉を食べる理由などなくなります。
「強い体を作るには動物性食品が欠かせない」というのは古い神話でありマーケティングです。植物性の食材だけで人体に必要な栄養を十分に満たすことができるというのは、現代では科学的にも証明されている当たり前のこと。 肉食でスポーツこそ、ストイックであり自虐なのです。
畜産動物にステロイドなどの各種ホルモン剤や抗生物質などを打ち込むことがよくあるので、肉などを食べているとそのような物質を間接的に摂取してしまうことになりますが、菜食をしていれば食事が原因でドーピング検査に違反してしまう心配もありません。
<プラントベースのアスリート>
「菜食で激しい運動は無理」
「菜食は筋肉が減る」
「ヴィーガンはガリガリに痩せて骨と肌がボロボロになる」
「菜食主義者は生理がこなくなる」
このような菜食への偏見が根強いですが、それを吹き飛ばしてくれるのが菜食のアスリートの存在。肉を食べて育った超一流のプロアスリートが、よりよいパフォーマンスを求めて菜食に移行しているのです。菜食で栄養不足になったり激しい運動をできなくなるわけがありません(野菜しか食べないなど極端なことをしない限り)。
菜食のアスリートが増えたのは最近のことではありません。
1908年ロンドンオリンピック陸上競技金メダルのエミル・ボイト、
陸上競技でオリンピック3大会に出場して金メダル9個獲得のパーヴォ・ヌルミ、
オリンピックのマラソン種目で史上初の2大会連続優勝アベベ・ビキラ、
水泳でオリンピック2大会に出場して金メダル6個獲得のマレー・ローズ、
400mハードルで金メダルを2回獲得したエドウィン・モーゼス、
そして30歳を過ぎてから自己記録を出したカール・ルイス。
「菜食主義者は持久力がない」というのは古いおとぎ話であり、昔から菜食の金メダリストや超一流のアスリートは存在していました。
競技別で見てみると、アメリカの4大スポーツでは菜食と相性の良さそうなバスケットボールだけでなくアメリカンフットボールの選手も積極的。体重が300パウンド(約136キログラム)以上ないと務まらないポジションの選手もプラントベースを取り入れています。激しい競技なので負傷する確率が高く、怪我に対処して早く試合に復帰するために菜食が大きな助けになるそうです。
アメリカンフットボール
マーキース・グッドウィン(Marquise Goodwin)
メジャーリーグは遠征が多く、試合が終わる時間が遅いので菜食は難しいのかもしれませんが、通算ホームラン数歴代2位のハンク・アーロンやC.Cサバシアなどの有名選手が菜食です。
MLB
C.C.サバシア(Carsten Charles "CC" Sabathia Jr.)
パット・ネシェック(Patrick John Neshek)
プリンス・フィルダー(Prince Semien Fielder)
トニー・ラ・ルーサ(Anthony La Russa, Jr.)
乳製品は運動のパフォーマンス低下に直接的な関連がありそうです。鼻炎や膝の炎症などを理由に乳製品の消費を徹底して避けている人がアメリカのプロスポーツ界には珍しくなく、LAドジャースの一部の選手たちが乳製品の消費をやめたところ、回復の早さと炎症の軽減を実感したそうです。
NBAでは、スピードを求められるガードの選手だけでなく、フォワードやセンターの大型選手も菜食に積極的です。
NBA
カイリー・アーヴィング(Kyrie Andrew Irving)
マイケル・ポーター・ジュニア(Michael Porter Jr.)
エネス・カンター・フリーダム(Enes Kanter Freedom)
クリアンソニー・アーリー(Cleanthony Early)
WNBA(女子バスケ)
減量、体重の維持・管理が楽なので、ボクシング、総合格闘技、レスリングなど試合前の減量が欠かせない競技でも菜食を取り入れる選手が増えていて、ボクシング世界王者、総合格闘技の有名選手、レスリング全米選手権優勝者、ムエタイ世界王者など菜食の格闘家がたくさん活躍しています。菜食の人は安静時の代謝率が11%も高いので、眠っている間もカロリーを燃焼してくれるのです。
ボクシング
ブライアント・ジェニングス(Bryant Jennings)
ヴァネッサ・エスピノーサ(Vanessa Espinoza)
総合格闘技
ジョージ・カラカニヤン(Georgi Karakhanyan)
アシュリー・エバンス・スミス(Ashlee Evans-Smith)
カロリーナ・コバケビッチ(Karolina Kowalkiewicz)
レスリング
柔術
テコンドー
ビクトリア・スタンボー(Victoria Stambaugh)
フェンシング
世界的な球技であるサッカー、テニス、バレーボールも菜食の選手が増えています。
サッカー
テニス
マルチナ・ナブラチロワ(Martina Navrátilová)
バレーボール
アナ・ダシウバ(Ana Carolina da Silva)
陸上競技
パーヴォ・ヌルミ(Paavo Johannes Nurmi)
エドウィン・モーゼス(Edwin Corley Moses)
パワーリフティング
ケンドリック・ファリス(Kendrick James Farris)
ストロングマン・ストロングウーマン
パトリック・バブーミアン(Patrik Baboumian)
アームレスリング
アレクセイ・ヴォエヴォダ(Alexey Voyevoda)(元ボブスレー、メダリスト)
カリスセニクス(ストリートワークアウト)
ニンジャ・ウォーリアー
クロスフィット
ニエンケ・ヴァン・オーバーベルド(Nienke van Overveld)
ボディービルディング
アーノルド・シュワルツェネガー(Arnold Schwarzenegger)
シェリ・ビーチャー・セイツラー(Shelli Beecher-Seitzler)
ボディービルダーは「平均寿命は50代後半」と言われることもあり、糖質を極端に制限して大会に臨む人が多いのですが、体に負担が大きく便秘に悩まされ、大会後は反動で炭水化物を大食いすることになります。ボディービルダーのような食事を勧めるトレーナーが珍しくありませんが、このような食事を続けているうちに糖代謝を上手にできない体になってしまい、人体に欠かせない燃料である糖質を摂取するたびに激太りするようになってしまうこともあります。ボディービルダーは健康とは無縁の競技であり、ボディービルダーのような食事を一般人がするのは健康的ではありません。健康ありきの競技ではなく、体型ありきの競技なのです。
大会当日は餓死寸前の状態で作り笑いをするので、控え室はゾンビの集団のような光景ですが、菜食のボディービルダーは無理なく体を絞ることができるので大会当日も元気なのだそうです。
筋肉を鍛えて体を大きくしたい人たちが「ゴリラになりたい」などと発言することがありますが、ゴリラは決して鶏ささみ、鶏胸肉、卵の白身などを食べません。本当にゴリラになりたいなら、ゴリラを見習って植物性の食材ばかり食べましょう。
ちなみにアメリカのボディービルダーの死因は、一般的なアメリカ人と比べ心臓病が約1.7倍、腎臓病は6倍以上に激増します。
プロレス
チェレステ・ボニン(ケイトリン)(Celeste Bonin aka Kaitlyn)
エヴァ・マリー(Eva Marie a.k.a Natalie Eva Marie)
アリーヤ(Nhooph Al-Areeb aka Aliyah)
ボディービルダーと同じく平均寿命が短いと言われているプロレスラーも菜食を支持しています。
自転車
BMX
トライアスロン
デュアスロン
ウルトラマラソン
ロングディスタンスランニング
トレイルラン
登山
水泳
サーフィン
ジョン・ジョン・フローレンス(John John Florence)
アルペンスキー
スノーボード
フィギュアスケート
アイスホッケー
クリケット
ビリヤード
ロッククライミング
ボート
ミカエラ・コペンヘイバー(Michaela Copenhaver)
カヤック
卓球
スケートボード
レーシングドライバー
F1ドライバー
ご覧のように超一流選手ほど菜食を取り入れています。生まれた時からベジタリアンや菜食の人もちらほら。自転車、トライアスロン、ウルトラマラソンのような持久力を問われる競技だけでなく、体の大きさや怪力が売りになる競技でも菜食の選手が活躍しています。トップアスリートほど菜食を勧めているし、食事や栄養について研究熱心なようです。
<食事に意識的になろう!>
日々の栄養管理をしてくれる栄養士やシェフを雇うことができるのは一部のトップアスリートだけかもしれませんが、「何を食べるか」を意識的に考えて取り組むことで、疲労回復や怪我の予防を重視した食生活を実践することができます。トレーニングや試合の日程に合わせて、食材やメニューを変えてみるのもよいでしょう。
プラントベースの食事をすることで、本来なら身体に入れるべきではない有害物質をたくさん避けることになり、体の機能性が保たれます。健康的な利点だけのために菜食を実行するのは決して簡単ではないかもしれませんが、完全菜食は難しくてもフレキシタリアンやベジタリアンなら難しくないし、無駄ではありません。牛乳と乳製品だけやめてみるなど、気楽にできることから始めてみましょう。フレキシタリアンやベジタリアンを続けているうちに菜食に興味が湧くこともあるし、肉を食べなくても健康でいられるという事実を体験しているうちに、菜食を不安視することがなくなっていきます。日々の食事はアスリートの現役寿命に直結しますから、食事を改善するなら早く始めたほうがよいでしょう。
サプリメントや動物性タンパク質など「何を食べるのか」ばかり注目されますが、何を食べるのかよりも「何を食べないのか」が重要なのです。プラントベースの生活は、人間の能力と可能性を最大限に引き出してくれます。