「精進料理」シンプルながらも美しい健康的な菜食

<精進料理とは?>

仏教とともにアジア大陸から日本へ伝わり、戒律に基づいて殺生や煩悩への刺激を避けることを主眼に調理された料理。出汁の概念など、精進料理の調理技法は日本料理の基礎になりました。  

仏教の戒律である不殺生に反するので、動物性の食材は禁忌。つまり精進料理は菜食なのですが、ただの菜食ではなく、五葷(ニンニク、韮、らっきょう、葱、など)も使用しません。精進料理は、英語圏の国ではオリエンタル・ヴィーガンと言われています。オリエンタルは東洋を意味しますが、中国やインドを中心とした修行者の多くは、人間本来の健やかさを保つために、生類(動物類、鳥、魚、虫などの生き物)だけでなく、五葷、酒類を口にしなかったようです。

五葷の扱いは時代や地域によって異なり、仏教では、 忍辱 (にんにく) 、野蒜 (のびる) 、韮 (にら) 、 葱 (ねぎ) 、 辣韮 (らっきょう) など。 道教 では、韮 (にら) 、辣韮 (らっきょう) 、忍辱 (にんにく) 、 油菜 (あぶらな) 、 胡荽 (コエンドロ) を指します。山椒、生姜、パクチー(コリアンダー)が五葷に含まれることもあるようです。

精進料理が五葷を禁じる理由は、五葷は口臭や体臭が強くなるだけでなく、興奮剤のような働きがあるので、高揚したり気分への影響が強く、性欲や怒りの感情をコントロールするのが難しくなってしまうから。食事のせいで煩悩が増えてしまったら、修行僧は困りますよね。身体の負担になってしまうものを避け、精神の安定を保つことが精進料理の目的。肉食を絶って心身を清め、雑念を捨てて一心に仏道修行に専念・精進するための食事であり、シンプルながらも美しい健康食として国内外から注目されています。 

精進料理は特別な料理ではなく、日常的に食べることができる身近な料理です。精進料理という特定の料理があるのではなく、五葷を使用せずに菜食の料理をすれば精進料理。

精進料理は、僧侶には必須の食事であり、仏教では食事も修行の一つとして重要視されます。

菜食で生活していると気づくのですが、動物性の食材を使用しない料理には、五葷が不要です。

お肉料理にはネギやニンニクが、焼き魚やお刺身にもネギがよく合いますよね?

ニンニクには溶血作用があり血液サラサラ効果があると言われていますが、血液をドロドロにする動物性食品を食べるからこそ、ニンニクの血液サラサラ効果を求めるのです。菜食の食材は血液をドロドロにする心配がないので、ニンニクの溶血作用は体に毒として働いてしまい、貧血を起こしてしまうことがあります。

ネギは薬効性が高いことで知られますが、犬や猫など多くの動物がネギを食べません。

五葷は食べ物ではなく、薬のようなものであると言うことができそうです。現代人の多くは毎食のように肉と五葷を食べますが、肉を食べるからこそ五葷が必要になるのです。

殺菌や毒消しの効果があるので五葷は動物性食品と相性が良く、お肉やお魚の臭い消しにもなるのですが、植物性の食材は衛生的なだけでなく悪臭の心配もいらないので、菜食の料理には五葷が不要になります。

ということで、菜食を実践する上で五葷を完全にやめる必要はありませんが、精進料理を参考に、五葷の使用を控え目にできるとよさそうですね。

菜食のラーメン、麻婆豆腐、カレーなどの料理には五葷が合いますが、五葷は存在感がとても強いので、五葷を多用すると和食は味と風味が下品になってしまいます。

近年は日本でも大豆ミートなどの模造食品が知られるようになり、シチューなどを豆乳で作る人も増えていますよね。

模造肉、もどき料理といえば、精進料理の世界では昔からやっていること。寒天を赤く着色して綺麗に薄く切ればマグロの刺身モドキ、麩をミンチ肉のように細工して作ったそぼろ料理、海苔・豆腐・小麦粉・片栗粉で作る鰻の蒲焼モドキ、そして特に有名なガンモドキ。なんでも工夫次第です。精進料理は和食の基礎になりましたが、お坊さんは時代を先取りしていました。 

健康な心と身体で充実して生きたいという願いは、人類共通の普遍的な願いですよね。身体だけでなく心の健康も安定させたい人には、精進料理、ぜひオススメです。