ヒップホップを通して見るプラントベース・ヴィーガンムーブメント

みなさんはヒップホップを聴きますか?

ヒップホップは単なる音楽ジャンルではなく、政治や社会問題を反映するアートであり、音と言葉を通じて幅広い層に物事を伝えるツールでもあります。

この記事では、ヒップホップを通じて、人権、健康、動物の権利、食の不平等について歌うアーティストをご紹介します。

 

  1. KRS-One(KRS-ワン)

KRS-Oneは、1990年にリリースした「Beef」と呼ばれる曲の中で、肉を食べることと病気の関連について歌っています。歌詞和訳はこちら

 

 

  1. Wu-Tang Clan(ウータンクラン)

ウータンクランのメンバーであるRZAは、90年代からヴィーガンの食事や衣類を推進してきています。RZAがプロデュースする36 Chambersというブランドで取り扱っているアイテムもすべてヴィーガン。ウータンクランの他のメンバーたち(GZA、Masta Killa、Method Man、Killah Priest、Ghostface Killah、Raekwon)も彼に影響を受けて肉の消費をやめたそうです。

 

 

  1. Russell Simmons(ラッセル・シモンズ)

ヒップホップレーベルDef Jamの創始者であるラッセル・シモンズも、97年に非暴力の観点からヴィーガンになった一人。プラントベースの食事、瞑想、ヨガなどを実践する自身の体験を通じて、食の選択を通じて自分の健康をコントロールできることを人々に知ってもらいたいとの考えから、ヴィーガニズムへの道のりを記した著書「The Happy Vegan」を出版しています。

 

 

  1. Jermaine Dupri(ジャーメイン・デュプリ)

ジャーメインはプラントベースのドリンク販売をする企業のオーナーを務めているだけでなく、オリジナルのヴィーガンアイスクリームをプロデュースするなど、音楽業界だけでなくヴィーガンフード界でもその影響を発揮しています。黒人のコミュニティで糖尿病や高コレステロール血症が大きな問題になっていることから、健康的な代替品を誰もが利用できるようにするというビジョンを掲げており、ヴィーガンになるために何も失う必要はないことを伝えています。

 

 

  1. i.am(ウィル・アイ・アム)

Will.i.amは、SNSで#vegangというハッシュタグを使用して、動物の権利や食の正義を支持する一人です。耳鳴りを患っていたことなどをきっかけにプラントベースの食事を始めたところ、体重が減って、睡眠も改善され、人生が大きく変わったとのこと。

 

Vibrations Pt.1 pt.2

“You eat the yellowtail, I'ma eat the plant-based. I ain't chewing on no food, with two eyes and a face”(お前はブリを食べるが、俺はプラントベース。目と顔のあるものなんて食べないぜ)

 

  1. Mýa(マイア)

Mýa は、健康や美容面の利点からホールフードプラントベースの食事を選んでいるアーティスト。肌の潤いを保つ、皺を減らす、ニキビを防ぐ、体重管理が容易、貧血の改善、ストレスや不安の軽減にもつながると言います。また、動物が受けている残酷な扱いについて、「すべての生き物は人道的な扱いを受けるべきであり、私たちが利用するものではない」と主張。ヴィーガンになることは最終的に「生命を維持すること」であるとし、人間の健康に加えて、畜産が地球に与えている負担に対処することの重要性も指摘。「地球なくしてアートは成り立たない」と言います。

 

 

  1. Stic (Dead Prez)(スティック(デッド・プレッツ))

デッド・プレッツは、警察の残虐行為、人種差別、資本主義、健康的な生活などについて取り上げた音楽を作ることで知られるヒップホップデュオ。ラッパーのstic.man(スティックマン)は、ウェルネスアドボケート、アクティビスト、作家、RBG Fit Club(ヴィーガンの料理教室、講演、ライブパフォーマンスなどを運営) の創設者といった顔も持っており、平和、フィットネス、アーバンガーデニング、瞑想、食の正義、平等、ヴィーガニズム、ウェルネスなどについて講義を行いながら、食事にアクセスできない家族に路上でヴィーガンの食事を提供する活動をしています。

 

 

  1. Supa Nova Slom(スーパー・ノヴァ・スロム)

母親でありグリーンフードムーブメントのパイオニアであるQueen Afua(クイーンアフア)からホリスティックヘルスやウェルネスについて学んだNovaは、「Hip Hop’s Medicine Man(ヒップホップのメディスンマン)」と呼ばれ、著書The Remedyを含む様々な媒体でヒップホップ世代にメッセージを広めているアーティスト。母親に反抗して子ども時代には一時的に砂糖中毒になったものの、スーパーフードで中毒から脱し、精神的安定を得たそう。サプリメント会社Supa Mega Foodsを運営するヴィーガンボディビルダーでもあります。

 

 

  1. The LOX —Styles P & Jadakiss(ザ・エル・オー・エクス スタイルズP&ジャダキス)

2003年に投獄されたことをきっかけに食事が気性に与える影響に気付きヴィーガンになったスタイルズPは、ジャダキスと一緒にコミュニティに根付いたジュースバーチェーン、Juices for Lifeを“フードデザート”(健康的な生鮮食品へのアクセスが不足している地域)であるブロンクス、ヨンカース、ブルックリンに設立。“Love is love.”(恋人やパートナーの性的指向や性同一性に関係なく、個人やカップルが表現する愛は有効であることを意味するフレーズ)を掲げ、プラントベースのライフスタイルを啓蒙。商品として虐待・消費される動物にも愛を持って接するようにと呼びかけている。

 

 

  1. AshEL SeaSunZ Eldridge(アシェル・シーサンズ・エルドリッジ)

AshELは、アフロビート、ダンスホール、ハードコアヒップホップなどを融合したメッセージ性のある音楽を製作するグループ、Earth Amplifiedの創設者。サンフランシスコ州立大学で“気候正義、人種、アクティビズム”の講義をしていた経験や複数の非営利団体で働いた経験から、変革を起こすためのアートや教育の重要性を唱えるAshELの活動は多岐。Earth Amplifiedの音楽は、健康や環境に悪影響な食品企業の存在や社会の不平等に疑問を呈すもの。また、Hip Hop is Greenのメンバーとして、健康的なプラントベースの食事だけでなく、有機栽培・フィットネス・食の正義・アニマルライツ・メンタルヘルスなどに関するリソースも提供。独立したフード組織であるUrban Farmacyを設立し、健康状態を改善し、持続可能な農業を促進し、若者に環境に優しいキャリアを生み出すための活動もしています。

 

 

  1. Sa-Roc(サーロック)

Sa-Rocは、学校の先生に渡された“What’s Wrong with Eating Meat?”という本で、肉食の健康や環境への影響について学んだことと、動物が好きであったことをきっかけに12歳のときに肉を食べるのをやめ、その後ヴィーガンになったそうです。一般に、ステーキを食べる行為は社会的な成功と結び付けられますが、ヒップホップ界で富を築いた有名人たちが不健康な食事が原因で亡くなっていったことなどに触れ、健康的な食事をすることでコミュニティにとって見本となることの重要性について話します。

 

 

  1. A$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)

エイサップ・ロッキーは、家禽の扱いについて知ったことをきっかけに2015年にベジタリアンになったアーティスト。「プラントベースの食事は、体、心、魂を浄化する」と言います。フードトラックを通じてホームレスにプラントベースの食事を提供する活動にも参加しており、2019年にリリースした「Babushka Boi(バブーシュカ・ボイ)」という曲の歌詞では、ヴィーガンになったことが示唆されています。

 

“Babushka Boi”

“Shit, I ain’t duck sauce since I became a vegan”(クソ、ダックソースなんてゴメンだよ、だって俺はヴィーガンになったんだから)

 

  1. Grey(グレイ)

ヴィーガンのガールフレンドが美味しい料理を作るのでヴィーガンになったというグレイも、アクティビストの顔を持つアーティスト。“Vegan Thanksgiving”(ヴィーガン感謝祭)のヒットで人々に影響を与えたことをきっかけにアパレルブランド Plant Based Drippinを創設し、健康的なライフスタイルを促進しています。

 

“Vegan Thanksgiving”

 

  1. TK the Artist(TKザ・アーティスト)

TK the Artistは、ヴィーガンに関する曲を多数発表しています。TKというステージネームは True Knowledge(確かな知識) を意味しており、ラップ・ヒップホップを通して、子どもを含む若い世代にヴィーガンの様々な側面を伝えているアーティスト。ヴィーガンであることが原因で実社会やネット上でいじめに遭ったり、虐待のないライフスタイルを選択したことで誰かに非難や誤解されるような状況をなくしたいという思いから活動しているそうです。

 

“Protein”

 

  1. DJ Cavem Moetavation(DJ カヴィム)

ラッパー兼“ゲトーグルメヴィーガンシェフ“のDJ Cavem は14歳からヴィーガンであり、妻のAlkemia(アルキミア)とともに、健康的なプラントベースの食事、気候変動、有機栽培、健康や環境に配慮した雇用、代替エネルギーの利用、食の正義などについて、ヒップホップを通じて積極的に啓蒙している人物。西部のハーレムと呼ばれるデンバーのファイブポインツ地区で育ったCavemの影響は地元にとどまらず、オバマ政権下のホワイトハウスでのパフォーマンスや有名雑誌やテレビ番組でも取り上げられたことで、活動家、教育者、ヴィーガンシェフとして知られるようになりました。アルバム Biomimicz は、食事の気候変動に対する影響にヒントを得たアルバムです。

 

TEDxトーク“Marketing environmental hip hop and culinary wellness”

 

  1. JAY-Z&ビヨンセ

JAY-Zは、トレーナーでありヴィーガンシェフのマルコ・ボルジェスが主催する「グリーンプリントプログラム」の一環としてプラントベースの食事を体験した経験から、世界中のファンにミートレスマンデーをはじめとしたプラントベースのライフスタイルをSNSで共有。プラントベースの食事にチャレンジしたファンへ、妻であり歌手のビヨンセとともに無料コンサートチケットを配布する試みなども行ってきていて、プラントベース食品企業への投資家でもあります。

 

 

ヴィーガン・プラントベースのムーブメントに賛同するその他の有名アーティスト

  • Solé
  • Left Eye
  • Joey Purp
  • Nas
  • Lil B
  • Andre 3000
  • DJ Khaled
  • Dre
  • O.R.E.

 

たくさんのヒップホップアーティストたちが、プラントベース・ヴィーガンのライフスタイルを選択していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。健康的なライフスタイル、食の平等、環境問題、動物の権利、持続可能なフードシステムなどについてコミュニティに伝える上での有益な手段でもあるヒップホップ。歌詞や背景を理解して聞いてみると、より深くヒップホップの世界を楽しめるのではないでしょうか。