牛を利用しないホエイプロテイン!アニマルフリープロテインとは?

トレーニングをしていて、ホエイプロテインのサプリメントを使っている人は多いですよね。

ホエイプロテインは、筋肉の合成を促すだけでなく、運動後の回復を助けたり、食欲を抑えたり、炎症を抑える働きをします。

一般に、ホエイプロテインは牛乳の成分であるホエイ(乳清)でできていますが、牛を利用しないホエイプロテインがあることをご存知ですか?

 

牛を利用しない「アニマルフリー」のホエイプロテイン

牛乳を使わずにホエイプロテインが作れるわけがないじゃないか!と思いますよね。

それが作れるんです。

近頃のアメリカやイギリスでは、発酵技術を駆使することで動物を利用せずに生産したホエイプロテインが販売されています。

 

カリフォルニアを拠点とするパーフェクトデイ社が開発したこのプロテインは、「アニマルフリー」プロテインと呼ばれ、環境、動物、食糧問題などに関心のある人たちはもちろん、健康志向の人にも選ばれています。

 

アニマルフリーのホエイの特徴

  • 牛や山羊などの動物を利用することなく製造される
  • 見た目も味も食感も従来の乳製品と同じ
  • ホルモン、抗生物質、乳糖を含まない

さらに、従来の製造方法と比較して、水の使用量、温室効果ガスの排出量、エネルギーの使用量を大きく削減する方法で作られています。

 

詳しく見ていきましょう。

 

動物を利用せずに製造

アニマルフリーのホエイプロテインは、マイクロフローラ(細菌叢)を利用した精密発酵(precision fermentation)と呼ばれる方法で作られています。

この方法では、水や栄養分を含む液体に、牛乳の特徴のDNA配列(設計図)を教えたマイクロフローラを入れて発酵させ、そこからタンパク質を分離して、ろ過・精製・乾燥させます。すると、食品メーカーが乳製品として使用できる極めて純度の高い粉末が出来上がるのです。

DNA配列を調べる上で、牛は犠牲になりません。犯罪現場に髪の毛が一本あればその現場にいた人物を特定できたり、口の中を綿棒で軽く擦るだけで遺伝子検査ができるように、牛の遺伝子は牛を傷つけることなく解析されています。

精密発酵は50年近く前から存在している技術で、食品業界ではチーズの凝固に使われるレンネット、プロバイオティクス、クエン酸、バニリン、アミノ酸、ビタミンB12などの製品作りに利用されています。医療業界では、糖尿病の薬であるインスリンや、抗生物質を作るためにも使われています(インスリンは以前は豚や牛から採取されていましたが、現在では、ヒトのDNAと大腸菌を使い、動物実験を行わずに製造することが標準となっています)。

精密発酵では細菌叢が工場のような役割を果たすので、動物を利用することなく、私たちのエネルギーになるタンパク質、脂質、炭水化物を作ることができます。つまり、この技術を駆使すれば、より少ない資源で、栄養価の高い食糧を世界中に供給できるようになるというわけです。食糧生産を根本から変えてしまう可能性を持つ画期的な技術だと言えるでしょう。

 

見た目も味も食感も従来の乳製品と同じでありながら体に優しい

クリーミーなアイスクリーム、熱で溶けて伸びるチーズ、泡立てると角が立つホイップクリーム、、、これらは牛乳に含まれるタンパク質の特性(油脂の乳化、ゲル化、熱安定性)によるもの。植物性タンパク質にはない働きなので、食品メーカーは牛乳を好んで使用します。

アニマルフリーのホエイプロテインは、牛乳のホエイと味も栄養価も同じで、前述したような特性を持ち合わせています。また、消化にもやさしく、健康的な食生活に必要な必須アミノ酸を適切な割合で含んでいます。

アニマルフリーのホエイプロテインは牛乳と同じ成分なので、牛乳にアレルギーのある人は避ける必要がありますが、動物性ではないので、乳糖(ラクトース)、コレステロール、ホルモンなどの副産物は含んでいません。また、牛乳と違って病原体による汚染の心配もありません。

 

ラクトース(乳糖)フリー

乳糖不耐症は、乳糖を消化できないために起こる消化器系の不調です。乳糖は牛乳に含まれる天然成分で、消化するためにはラクターゼと呼ばれる酵素を必要としますが、遺伝的に乳糖を消化するのに十分な量のラクターゼが体内で作られない人は、東アジア系の民族では9割にも上ると言われています。乳糖不耐症は命にかかわるものではありませんが、大きな不快感をもたらすことがあります。アニマルフリーのプロテインは乳糖不耐症の人でも安心して使うことができます。

 

 

環境にも優しい

畜産動物は、世界人口の総カロリーの18%、タンパク質の37%しか供給していませんが、畜産動物の飼料生産では世界の農地の83%もが使用されています。また、世界の食料システムで排出される温室効果ガスのうち56~58%もが動物性食品の生産によるものです。

アニマルフリーのホエイプロテインの生産なら、

  • 水の使用量を最大99%削減
  • 温室効果ガスの排出を最大97%削減
  • 再生不能エネルギーの使用量を最大60%削減

牛乳の生産には膨大な量の水が使用されますが、アニマルフリーのプロテインなら水の使用量を大きく抑えることができます。牛を大量に繁殖させると強力な温室効果ガスであるメタンが大量発生しますが、精密発酵ならその発生も抑えることができます。

米国のすべての食品メーカーが動物性のホエイをアニマルフリーのホエイに置き換えた場合、

  • 18兆6000億ガロンの水
  • 750億メガジュールの非再生可能エネルギー(米国の全家庭の3分の1に当たる4400万世帯の電力を毎年供給するのと同等)
  • 2億4600万トンの二酸化炭素排出(年間5,300万台の乗用車を道路から排除することに匹敵)

を年間で節約・回避することができるのだそうです。

 

これからの乳製品は、牛が関与するものとは限らない

科学の進歩によって、乳製品は必ずしも牛が関与するものではなくなりました。

従来の乳製品の生産方法には倫理や環境などの面で多くの問題が残りますが、そのような問題を発生・悪化させることなく、多くの人が好む乳製品を生産することができるようになったのです。

土地や資源が少なく、乳製品の輸入に頼っている地域でも、精密発酵の技術を利用して乳製品を生産することができるようになれば経済を強化できるようになるかもしれません。また、需要供給や外交の影響を受ける畜産業者も適切な支援を受けることで、このような持続的なビジネスへシフトしていくことができれば、ウィンウィンなのではないでしょうか。

 

ホエイプロテインは運動する人が使うサプリメントだけでなく、焼き菓子、パン、シリアル、パン粉、クルトン、ブロス、グレイビーソース、ブイヨン、チューインガム、チョコレート、スナック菓子、コーヒークリーマー、調味料、インスタント飲料、低脂肪食品、マーガリン、エナジーバー、プリン、ドレッシング、スープ類、スパイスミックス、ベジタリアン向け加工食品など、実に様々な食品に使用されています。

そう遠くない未来に、これらがすべてアニマルフリーに置き換わるときが来るかもしれません。

 

最後に

実際に、アニマルフリーのホエイを利用したプロテインシェイクとアイスクリームを食べてみましたが、どちらも美味しいの一言。サプリメントは、植物性ミルクにすぐに溶けてダマになることもありません。

 

私は遺伝子検査の結果、乳糖不耐症であることも判明しているので、乳糖を含まないのもアニマルフリーホエイのうれしいところです。

 

アニマルフリーホエイは、環境や倫理に配慮したいけれど乳製品の味を楽しみたい人にオススメです。

また、ホルモンや抗生物質を含まないので、フィットネスの目的に合わせてホエイを使いたい健康志向の人にもよい選択肢なのではないでしょうか。