ボクシング大国アメリカで使われているグローブのサイズや種類について

私はパーソナルトレーナーとしてボクシングの練習をプログラムに取り入れることがありますので、この記事ではボクシングで使う道具について、説明したいと思います。

まずは、グローブの重量と種類について。

 

<グローブの重さは、どのように選ぶ?>

プロの試合では、最も軽い階級から、140パウンド(約63.5キロ)のスーパーライト級までの選手は、8オンスのグローブを使います。

スーパーライト級よりも上の階級であるウェルター級からヘビー級の選手は、10オンスのグローブを使います。

 

女子の試合では、最も軽い階級から126パウンド (約57.1キロ)のフェザー級までの選手は8オンスのグローブを使い、フェザー級よりも上の階級であるスーパーフェザー級から上の階級の選手は、10オンスのグローブを使います。

 

ただしこれはタイトル認定団体により異なることもあり、男子選手の場合、147パウンド(約66.6キロ)のウェルター級までは8オンスのグローブを使い、ウェルター級よりも上の階級であるスーパーウェルター級からヘビー級の試合では10オンスのグローブが使われることもあります。

 

アマチュアの試合では、最も軽い階級から、140パウンド(約63.5キロ)の階級までは10オンスのグローブ。それよりも重い階級では12オンスのグローブを使います。

(出典:RINGSIDE

ただし、アマチュアの試合では、大会を主催する団体や男女の違いにより階級区分やグローブのサイズが異なることもあります。

 

重いグローブは安全性が高くなると考えられていて、体重が重い階級の選手はパンチの威力も強くなるので、プロ・アマチュアともに、重い階級では重いグローブが使われるのです。しかし、「大きいグローブによるダメージでは即座にノックダウンに結びつかないのでダメージが蓄積してしまい、却って危険である」という意見もあります。

 

35歳以上の選手が出場するアマチュアのマスターズというカテゴリーでは、性別や階級に関係なく16オンスのグローブを使います。

 

ここでは、便宜上、最も軽い階級からスーパーライト級までを「軽量級」、ウェルター級からヘビー級までの階級を「重量級」、ということにして説明を進めていきます。

 

アメリカでは一般的に、プロ、アマチュア、マスターズを問わず、軽量級の選手は、サンドバックやミット打ちの練習では12オンスのグローブ。スパーリングでは14オンスのグローブを使います。

重量級の選手は、サンドバックやミット打ちの練習では14オンス。スパーリングでは16オンスのグローブを使うのが一般的です。

(もちろん、好みによりグローブの重量は自由に選択できます)

 

この画像一番右の青いグローブが8オンス。そこから順に、10オンス、12オンス、14オンス、そして16オンスです。拳の部分だけでなく、グローブ全体の大きさがずいぶん違いますよね。

<なぜスパーリングでは大きめのグローブを使うの?>

スパーリングで大きいサイズのグローブ使う理由は、主に3つあります。

1.大きいグローブは自分の顔や体を守れる範囲が大きいので隙が小さくなり、パンチを直接受けてしまうことを防ぐのに役立ちます。

2.相手にパンチが命中しづらくなる

グローブが小さいと相手の顔や体にパンチが命中しやすくなってしまいますが、大きいグローブは顔や体に直接パンチを当てることが難しくなります。

仮に、スパーリングパートナーに20センチの隙があったとしましょう。拳(ナックル部分)の大きさが15センチのグローブですと、20センチの隙間をすんなりと通り抜けてしまいますよね。でも、拳の大きさが25センチあるグローブを使えば、正確に強いパンチを打っても隙間を通り抜けることが難しくなります。

3.大きいグローブはクッション性が高いので、自分の拳だけでなく相手の体を労わることになる。

例えば、相手の肘を殴ってしまうと自分の拳を傷めてしまいますが、大きいグローブはクッション性に優れているので、拳を怪我するリスクが少なくなります。

また、自分が肋骨などの急所を殴られてしまった時も、大きいグローブはクッション性に優れているので、骨折や打撲といった怪我をしてしまう危険が下がります。

 

スパーリングは試合ではないので、相手を傷つけてダメージを負わせる必要性が一切ありません。自分のためだけでなく練習相手のためにも、安全性を優先してスパーリングでは大きいグローブを使います。

 

<体を鍛えたいなら、重いグローブがよい?>

「重いグローブを使えば筋トレになる」と考える人が少なくありませんが、それはオススメできません。軽量級の選手が12オンスではなく16オンスのグローブを練習で使ってしまうと、ほんの120グラム程度の違いですが、体の軸に大きく影響してしまいバランスを崩してしまいますし、まるでグローブに振り回されているような感じもしますから、無駄に大きいグローブを使うべきではありません。

 

<試合に向けた練習で使うグローブ>

試合で使うサイズのグローブに慣れておくことも大事です。試合が近くなったら、実際に試合で使うサイズのグローブを練習で着用して、大きさに慣れておくとよいでしょう。

先ほど、”無駄に重たいグローブを使うべきではない、と説明しましたが、アマチュアのマスターズに出場する選手は、16オンスのグローブに慣れておくことも大事ということです。

 

<マジックテープと紐式>

マジックテープ式のグローブのことを、アメリカでは「ベルクロ」または「フック&ループ」と言います。

紐式のものは「レース」と言います。

プロの試合ではレースのグローブを使用しますが、アマチュアの試合ではベルクロのグローブが使われることが多いです。

練習では、プロ・アマチュアを問わず、サンドバッグやミット打ちはベルクロのグローブで問題ありませんが、スパーリングではレースのグローブが使われることが多いです。

スパーリングでレースのグローブを使う理由ですが、やはりベルクロよりもレースの方がしっかりとグローブを腕に固定することができます。特に、相手のパンチをブロックやキャッチすると、それなりに強い衝撃が来ますので、ベルクロだとグローブが腕からズレてしまうことがありますが、そのような心配がレースのグローブは少なくなります。

また、レースのグローブはスパーリングで使うことを前提にデザインされているので、手首周辺や手の平のパッドが分厚く、拳のクッション性も優れているものが多いです。

ただし、レースのグローブを使用する場合、自分で紐を結ぶことができません。ミット打ちやスパーリングをする際は必ず誰かがジムにいるものですが、サンドバッグを打って練習する時は自分一人しかジムにいないこともありますから、ベルクロのグローブだと便利ですよね。

予算の都合でグローブを1組しか買えない場合は、スパーリングにも使用できるクオリティーのベルクロのグローブを買うとよいのではないでしょうか。

 

<まとめ>

基本的に、グローブは値段と質が比例しています。安いものは壊れるのも早く、怪我をする危険が高くなります。高価なものは長持ちしますし、安全性も高い傾向にあります。

グローブは決して安い買い物ではありませんから、自分の体格や使用目的に合わせて選択するようにしましょう。